このように帰省中もあわただしい日々を過ごした。
父は私が小学校低学年の頃、星に興味をもつきっかけを作ってくれた。冬の夜道を二人で歩いていたとき、「あれがオリオン座だ」と言って指をさしてオリオン座を教えてくれた。オリオン座は私が覚えたはじめての星座になった。
また、あるとき、卓上望遠鏡を買ってきてくれた。これは口径３ｃｍの単レンズを使った地上用の正立像の望遠鏡であったが、月を見るとクレーターが見えるため、この望遠鏡で毎日飽きずに月などの天体を見て、天文への興味を深めていった。
自分が発見者とは・・・。何か夢でも見ているような感覚が続いた。
彗星発見には以前から憧れていて学生の頃には捜してみたこともあった（成功しなかったが）が、今回は努力らしい努力もせず、少し前に発見されたヘーニッヒ彗星がどのように写っているかを見ようとSWAN画像を見にいって、偶然に見つかったものである。
今回の発見は何か父に関係があるのでは？
既にお膳立てが整っていて、発見へと導かれたような気もするのである。
発見の方向も、昔、父が私に教えてくれたオリオン座の近くであったし、眼視観測を試みたり撮影に成功したりした８月上旬には、彗星はまさにオリオン座にいた。父の初盆の８月に急に明るくなり、お盆が終わると急に暗くなった。お盆の時期に合わせたように明るくなった彗星であった。不思議な一致である。
父が亡くなってから４ヶ月後の２００２年４月には祖父が亡くなった。祖父は９７才と長生きであったが、彗星の明るくなった８月は祖父の初盆でもあった。
お盆直前に私が偶然に発見し、はじめて父に教えてもらった星座のオリオン座で明るくなり、父と祖父の初盆の期間に明るく輝き、お盆を過ぎると急速に暗くなっていき消滅したのがSWAN彗星であった。
偶然ではあろうが、話がうまく出来過ぎているという気もしないではない。